「うちの社員、勝手にChatGPT使ってるかも」から始まる話
こんな場面はありませんか。ある社員が、自分のスマホでChatGPTを開き、お客様の見積書をそのまま貼り付けて「もっと丁寧な文章にして」とお願いしていた——。悪気はありません。むしろ仕事を早く終わらせようと工夫しただけです。
でも、そこにはお客様の名前や金額が入っていました。この情報がどこに送られ、どう使われるのか、貼った本人も分かっていません。これは沖縄の小さな会社でも、じゅうぶん起こりうる話です。
「大企業みたいな立派なルールなんて、うちには作れない」。そう感じる方も多いと思います。でも安心してください。必要なのは分厚い規程ではなく、A4・1枚で作れる形の「最小セット」です。 この記事では、ITに詳しくない担当者でも今日から作れる手順を、具体例つきで説明します。

なぜ「最小セット」でいいのか(完璧より、まず1枚)
生成AIとは、文章や画像を自動で作ってくれる道具のことです。ChatGPTなどが代表例で、質問を打ち込むと答えを返してくれます。便利ですが、使い方を決めておかないと、大切な情報を外に漏らしてしまう心配があります。
ここで大事なのは、一番危ないのは「ルールがゼロで、みんな自己流で使っている」状態だということです。完璧なルールを目指して何ヶ月も止まっているより、荒くても1枚のルールを配るほうが、はるかに安全です。
「そんな簡単でいいの?」と不安になるかもしれません。実は国も、生成AIの使い方について考え方や手引きを公表しています。つまり基本の考え方はすでに世の中にあります。中小企業は、その簡易版を自社向けに作れば十分です。
この記事のゴールは、はっきりしています。
- A4・1枚におさまる
- 社員全員が5分で読める
- 専門用語を使わず、パートやアルバイトにも伝わる
この3つを満たすルールを、一緒に作っていきましょう。
最小セット:まず決める5項目
最初のルールに書くのは、次の5つだけで大丈夫です。多すぎると誰も読みません。まずはこの5項目に絞ります。
1. 使ってよいツール
どのAIを使ってよいかを決めます。おすすめは「会社が用意したものだけを使う」という形です。
- 例:「業務では会社が契約した◯◯だけを使う。個人のアカウントで仕事の情報を入力しない」
2. 入れてはいけない情報
AIに打ち込んではいけない情報を決めます。詳しい線引きは次の章の表で説明します。ここでは「お客様や社員の個人情報、社外に出したら困る情報は入れない」と書いておけば十分です。
3. 出てきた答えの扱い
AIの答えは、間違っていることがあります。もっともらしいウソを返すこともあります。
- 例:「AIの答えはそのまま使わず、必ず人が確認する。特にお客様へ出す文章、数字、法律にかかわることは要注意」
4. 困ったとき・間違えたときの連絡先
「うっかり顧客情報を入れてしまった」というとき、隠されるのが一番困ります。すぐ相談できる相手を決めておきます。
- 例:「使い方に迷ったら、間違えたら、すぐ◯◯さんに相談する。怒られません」
5. 迷ったら入力しない
最後は、シンプルな原則です。
- 例:「入れていいか迷ったら、入れない」
この5つをA4に書き写すだけで、最初のルールは完成です。 難しく考える必要はありません。
入れてよい情報・ダメな情報の線引き
「入れていいか、ダメか」を毎回悩むのは大変です。次の3つの基準で判断すると、迷いが減ります。
- 個人が特定できる情報か(名前・住所・電話番号・顔写真など)
- 外に出たら困る自社の情報か(見積・売上・未公開の企画など)
- 他人の権利物か(他社の文章・画像・ソフトなど)
このどれかに当てはまるなら、原則として入れないと考えます。判断に迷ったときの目安を表にしました。
| 情報・書類の例 | 判断 | ひとこと |
|---|---|---|
| 公開済みの会社案内・ホームページの文章 | ○ | すでに世の中に出ている |
| 一般的な質問(メール文の書き方など) | ○ | 自社の秘密が含まれない |
| 社内向けのお知らせ文の下書き調整 | △ | 固有名詞や数字を消してから |
| 顧客名簿・見積書・請求書 | × | 個人情報と自社情報の両方 |
| 履歴書・従業員名簿 | × | 個人情報のかたまり |
| 契約書・未公開の企画書 | × | 外に出たら困る情報 |
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「名前を消せば使える?」への補足
「名前だけ消せば大丈夫では?」と思うかもしれません。ですが、住所や取引の内容から個人が分かってしまうこともあります。消したつもりでも特定できるなら、それは個人情報のままです。迷うなら入れない、が安全です。
【業種別】沖縄で多い業種の「これはNG/これはOK」
自社の書類に当てはめると、判断がぐっと楽になります。沖縄で身近な業種ごとに例を挙げます。あくまで一般的な例ですので、自社の実情に合わせて調整してください。
小売・飲食
- NG:お客様の予約リストやポイント会員の名簿を貼る
- OK:新メニューの紹介文の下書き、SNS投稿文のたたき台づくり
士業・不動産管理
- NG:相談者の個人情報、物件オーナーや入居者の名簿を貼る
- OK:一般的な制度の説明文をやさしく書き直す下書き
建設
- NG:協力会社との契約金額、未公開の見積内訳を貼る
- OK:安全朝礼の連絡文、作業手順の説明文の整え
医療・介護
- NG:患者・利用者の氏名や相談内容、体調の記録を貼る
- OK:一般的な健康の豆知識を、掲示用にやさしく書き直す
共通する考え方は同じです。「その人が読んだら困る中身」は入れず、「もう公開している・特定の誰かがいない」中身だけを使うということです。
情報を守る最低限の設定
同じChatGPTでも、無料の個人版と、会社向けのプランでは扱いが違います。ざっくり分けると次のとおりです。
- 個人向けの無料版:設定によっては、入力内容がAIの学習に使われることがある
- 会社向け(法人プラン):入力を学習に使わない扱いが基本になっているものが多い
「学習に使われる」とは、打ち込んだ内容がAIの勉強材料になり、他の場面で出てしまう心配がある、という意味です。これを避ける設定を「オプトアウト」と呼びます。
設定を確認する流れ
個人版を使う場合でも、学習に使わせない設定にできることがあります。おおまかな流れは次のとおりです。
- 画面のすみにあるアカウント名やアイコンを押す
- 「設定」を開く
- 「データ管理」や「データコントロール」の項目を探す
- 「モデルの改善に使う」といった項目をオフにする
画面の言葉はサービスの更新で変わることがあります。見当たらないときは、公式のヘルプで「学習」「データ」と検索すると案内が見つかります。
ただし、大事なことがあります。設定はあくまで保険です。基本は「そもそも入れない」こと。 設定に頼りきらず、線引き表を守るのが一番の守りになります。
作った後:全員に伝える・半年に1回見直す
ルールは、作って終わりではありません。引き出しにしまったら、誰も守れません。小さな会社でも回せる、現実的な広め方を紹介します。
全員に伝える
- 朝礼やミーティングで、A4の1枚を読み合わせる
- 社内チャットや休憩室の壁に貼っておく
- パート・アルバイトにも同じ1枚を配る
このとき、「なぜダメか」を一言そえると守られやすくなります。「これはお客様の名前だから、外に出ると信用に関わる」といった具合です。理由が分かると、人は納得して動きます。
半年に1回、見直す
AIの道具も設定も、どんどん変わります。次のタイミングで軽く見直しましょう。
- 半年に1回、定期的に
- 使うツールを変えたとき
- ヒヤリとする出来事があったとき

生成AIをこれから使い始める段階なら、ルールと合わせて全体像も押さえておくと安心です。あわせて生成AIは何から始める?中小企業の第一歩も参考になります。会議の記録づくりに使いたい方は会議の議事録をAIで自動作成する方法もどうぞ。
まとめ
生成AIの社内ルールは、分厚い規程でなくて大丈夫です。今日の内容を振り返ります。
- まずは最小セット5項目をA4・1枚にまとめる
- 入れてよい・ダメの線引きは、3つの基準と表で判断する
- 設定に頼りきらず「そもそも入れない」を基本にする
- 作った後は全員に配り、半年に1回見直す
完璧を目指して止まるより、荒くても1枚を全員に配るほうが、ずっと安全です。まずはこの記事の5項目と線引き表を、自社の書類名で埋めるところから始めてみてください。
