毎月グラフを作り直していませんか

月末になると、ノートの売上を電卓で合計し、報告用のグラフを作り直す。棚を見て在庫を紙に書き、発注は勘で決める。沖縄の小さなお店や事業所では、よくある場面です。

この手間の多くは、スプレッドシートの使い方を少し変えるだけで減らせます。

この記事のゴールは1つです。一度設定すれば、あとは数字を入力するだけでグラフが自動で更新される状態を作ることです。プログラミングは使いません。無料のGoogleスプレッドシートだけで進められます。

沖縄の小さな商店のバックヤードで、店主が電卓と手書きのノートを前に売上を集計しながら、机の上のノートパソコンの画面をのぞき込んでいる場面

まずは、スプレッドシートのグラフがどう動くのかを知ることから始めます。

スプレッドシートのグラフは基本「自動更新」される

意外と知られていませんが、スプレッドシートのグラフには大事な性質があります。

元の表の数字を書き換えると、グラフも自動で変わるという点です。

たとえば、次のような月別売上の表があるとします。

売上
4月 120
5月 150
6月 130

横にスクロールできます

この表からグラフを作ったあと、5月の「150」を「180」に直すと、グラフの5月の棒も自動で伸びます。作り直す必要はありません。

ただし、注意点があります。下に新しい行(7月など)を足しても、そのままではグラフに反映されないことがあるのです。これが現場で一番つまずくところです。

なぜかというと、グラフは「4月から6月まで」と範囲を覚えているからです。7月を足しても、その範囲の外なので気づいてくれません。

この問題の直し方は後の章で説明します。まずは、基本のグラフの作り方を見ていきましょう。

売上グラフを作る(挿入からグラフエディタまで)

Googleスプレッドシートでグラフを作る手順は、次の4ステップです。

  1. グラフにしたい表全体を、マウスでドラッグして選ぶ(見出しの行も含めます)
  2. 上のメニューから「挿入」→「グラフ」を選ぶ
  3. 右側に「グラフエディタ」という設定画面が開く
  4. 「グラフの種類」で折れ線や棒などを選び、タイトルを付ける

これだけで、表の内容に合ったグラフが表示されます。

ここで、範囲指定という言葉が出てきます。範囲指定とは、どのセルからどのセルまでをグラフに使うかを決めることです。難しく考えず「どこからどこまでを絵にするか」を選ぶ、と考えれば大丈夫です。

つまずきやすいポイント

  • 先頭行の見出し:1行目に「月」「売上」などの見出しを入れておくと、グラフの軸に名前が付いて読みやすくなります。
  • 日付の並び順:折れ線グラフは、日付が古い順に並んでいると自然な形になります。
  • 縦か横か:データは縦(列方向)に並べるのが基本です。項目を横に広げると、グラフの向きが思ったのと変わることがあります。

もしグラフの見た目が変だと感じたら、グラフエディタの「設定」タブで、行と列を入れ替えるチェックを試してみてください。多くの場合、これで直ります。

ここが本題|数字を入力するだけでグラフが伸びる設定

さきほどの「行を足しても反映されない」問題を解決します。ここがこの記事で一番大事な章です。

答えはシンプルです。データ範囲を列全体で指定することです。

グラフエディタの「設定」タブを開くと、「データ範囲」という欄があります。ここが最初は A1:B7 のように「7行目まで」と決まっています。

これを、次のように書き換えます。

  • 変更前:A1:B7(7行目まで、という意味)
  • 変更後:A:B(A列とB列の全部、という意味)

A:B と書くと、「A列とB列に入っているものは全部グラフに使う」という意味になります。こうしておけば、8行目、9行目と下に足していくだけで、グラフが自動でその分だけ伸びていきます。

これで、毎月グラフを作り直す作業がなくなります。数字を入力するだけです。

それでも更新されないとき

  • 見出しの行がずれていないか確認します。列全体を指定すると、空白のセルが混じっても基本は問題ありません。
  • グラフの範囲がずれたと感じたら、グラフエディタの「データ範囲」をもう一度開き、A:B に直せば元に戻ります。
  • 別のシートのデータを使うときは、シート名!A:B のようにシート名を頭に付けます。

範囲を列全体にするだけ。この一手間が、毎月の手間を大きく減らします。

売上・在庫で「どのグラフを選ぶか」早見

グラフの種類は多いですが、迷う必要はありません。何を伝えたいかで決めます。売上と在庫でよく使う組み合わせを表にまとめました。

見せたいこと おすすめのグラフ
売上の推移(時間の流れ) 折れ線グラフ 月ごとの売上の増減
比較(どれが多いか) 縦棒グラフ 店舗別・曜日別の売上
割合(構成比) 円グラフ 商品カテゴリごとの売上割合
在庫数の比較 横棒グラフ 品目ごとの在庫数量
在庫の増減 折れ線グラフ 週ごとの在庫の変化

横にスクロールできます

品目名が長いときは、縦棒より横棒が読みやすくなります。名前が横に並ぶので、文字が重なりません。

伝わるグラフにする一工夫

  • 色を使いすぎないこと。強調したい1本だけ色を変えると、見る人の目がそこに向きます。
  • 数値をグラフに表示すると、「だいたいいくつか」がひと目で伝わります。グラフエディタの「カスタマイズ」で設定できます。

「どのグラフが正解か」ではなく、「上司や取引先に何を伝えたいか」で選ぶ。これを基準にすると、迷いが減ります。

増え続けるデータを自動集計してからグラフ化する

日々の売上や入出庫は、日付ごとにバラバラに増えていきます。これを毎回手で合計するのは大変です。

そこで、関数やピボットテーブルで自動集計してから、その集計表をグラフにする方法があります。

関数で集計する

たとえば商品ごとの売上を合計したいときは、SUMIFという関数が使えます。「この商品と一致する行の売上だけを足す」という命令です。元のデータに新しい行を足せば、合計も自動で計算し直されます。

関数での自動集計のやり方は、Excel関数で毎月の集計を自動でまとめるで手順を紹介しています。スプレッドシートでも考え方は同じです。

ピボットテーブルで集計する

もっと手軽なのがピボットテーブルです。これは、細かいデータを「月別」「商品別」に自動で集計してくれる機能です。

  1. 集計したいデータ全体を選ぶ
  2. 「挿入」→「ピボットテーブル」を選ぶ
  3. 「行」に商品、「値」に売上を入れる

これで商品別の合計表ができあがります。元のデータを増やしたら、ピボットテーブルを更新すれば集計もやり直されます。ここでもプログラムは不要です。

この集計表を使って、前の章の手順でグラフを作れば完成です。

作ったグラフを報告資料で使う・自動更新の注意点

作ったグラフは、報告資料でもそのまま活かせます。

GoogleドキュメントやGoogleスライドにグラフを貼るとき、「スプレッドシートにリンク」を選んで貼り付けます。こうすると、後から元の数字が変わったときに、資料側の「更新」ボタンを押すだけで最新のグラフに差し替わります。

作り直して貼り直す作業がなくなります。

注意しておきたい点

  • 共有の権限:他の人に見せるときは、閲覧のみか編集可能かを選べます。数字を勝手に変えられたくない場合は「閲覧者」にします。
  • 外部データの更新間隔:別のファイルから数字を読み込む関数を使うと、更新に数分から1時間ほどかかる場合があります。すぐに反映されなくても、少し待てば直ることが多いです。
  • シートを分けている場合:データと集計を別シートにしているときは、範囲指定にシート名を付け忘れないようにします。

日々の入力から集計、グラフ、報告資料まで、一度つなげておけば手作業が減ります。

もっと自動化したい場合の選択肢

「決まった時刻に、自動でレポートを作りたい」というところまで進みたい場合もあります。

そのときは、スプレッドシートに付いているGAS(スクリプト)という仕組みや、決まった時間に処理を動かすトリガーという機能があります。ただし、これらは簡単なプログラムを書く必要があり、非エンジニアには少し重い作業です。

多くの中小企業では、まずは列全体の範囲指定と、関数・ピボットテーブルで十分です。ここまでで、毎月の作り直しはほぼなくなります。

自動化をもっと広げたいときは、業務自動化の始め方|どの作業から手をつけるかもあわせて読んでみてください。

まとめ

この記事の要点を振り返ります。

  • グラフのデータ範囲を A:B のように列全体で指定すれば、あとは数字を入力するだけでグラフが伸びます。ここが一番のポイントです。
  • グラフは「何を伝えたいか」で選びます。売上の推移は折れ線、比較は棒、割合は円、在庫は棒が基本です。
  • バラバラに増えるデータは、関数やピボットテーブルで自動集計してからグラフ化すると楽になります。

まずは、いつも作り直している1つのグラフを、列全体の範囲指定に変えてみてください。それだけで、来月からの手間が変わります。