「ChatGPTを使ってみたいけれど、情報が漏れそうでこわい」。そう感じて、使用を禁止したままにしている会社は少なくありません。

でも、禁止だけでは問題は解決しません。社員が個人のスマホでこっそり使う「隠れ利用」が起きやすくなり、かえって目が届かなくなるからです。

この記事では、完璧な規程ではなく「全員が読んで守れる1枚のルール」を作るための手順を、やさしく整理します。読み終わるころには、自社用ルールのたたき台が書き始められます。

沖縄の小さな事務所で、パソコンの前に座った担当者が見積書らしき書類を手に、入力してよいか迷って手を止めている場面。窓の外にはやわらかな日差し

ChatGPTでなぜ情報が漏れるのか(3つの経路)

まず、「どこから漏れるのか」を知ることが第一歩です。漏れる経路は、大きく3つに分けて考えると整理できます。

経路1:入力した内容が残る・使われる

ChatGPTに打ち込んだ文章は、サービス側に送られます。設定によっては、その内容がAIの学習(性能を良くするための材料)に使われることがあります。

つまり、取引先の名前や見積金額をそのまま貼り付けると、その情報が自社の外に出てしまう可能性があるということです。また、打ち込んだ内容は履歴として残ります。

経路2:アカウントの乗っ取り

ログインに使うIDとパスワードが盗まれると、他人があなたのアカウントに入り、過去のやり取りを見られてしまいます。

パスワードの使い回しは、この危険を高めます。同じパスワードを他のサービスでも使っていると、1か所漏れただけで芋づる式に狙われます。

経路3:サービス側の不具合

まれに、サービス側のシステムトラブルで、他人の履歴が見えてしまうといった不具合が起きることもあります。これは利用者側では防げません。

だからこそ、「そもそも見られて困る情報を入れない」ことが、いちばん確実な対策になります。過去には、社員が業務の機密情報を入力してしまった事例も報じられています。

入力していい情報・ダメな情報の線引き

「では、何を入れてよくて、何がダメなのか」。ここがいちばん知りたい部分だと思います。具体例で整理します。

区分 具体例
入れてはいけない 顧客名・住所・電話番号、見積書や契約書の中身、社員の人事評価や給与、社内限定の資料、まだ公開していない企画、プログラムのソースコード
入れてもよい すでに公開しているホームページの文章、一般的なあいさつ文のたたき台、社名や個人名を伏せた相談、言い回しの言い換え

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判断に迷ったら、原則はひとつです。

  • 迷ったら「入れない」。
  • 個人名や会社名は「A社」「担当者」などに置き換えてから相談する。

たとえば、見積書のたたき台を作らせたいなら、実際の取引先名や金額は書かず、「建設業向けの見積書の項目を挙げて」といった形で相談します。中身は自分で埋める、という使い方なら安全です。

文章を速く書く具体的な使い方は、ChatGPTでメール・提案書を速く書くでも紹介しています。

まず無料でできる設定:履歴・学習をオフにする

有料プランを契約しなくても、入力内容を学習に使わせない設定は無料でできます。ブラウザ版での流れを紹介します。

  1. 画面右上や左下にある、自分のアカウント名・アイコンをクリックする
  2. メニューから「設定(Settings)」を開く
  3. 「データコントロール(Data controls)」を選ぶ
  4. 「すべての人のためにモデルを改善する(Improve the model for everyone)」のスイッチをオフにする

これで、打ち込んだ内容がAIの学習に使われにくくなります。

つまずきどころ

  • 無料版でもこの設定はできます。 有料にする必要はありません。
  • 設定しても、機密情報を入れてよいわけではありません。 履歴や不具合のリスクは残ります。「学習オフ=安全」ではない点に注意してください。
  • 社員がそれぞれ自分の個人アカウントでバラバラに使っていると、設定を全員に統一するのが難しくなります。使うアカウントを会社で決めておくと管理しやすくなります。

社内ルールのたたき台(そのまま使える6項目)

ここが本題です。難しい規程は要りません。A4用紙1枚に、次の6項目を書けば十分です。

  1. 使ってよい業務・ダメな業務
    • 例:文章のたたき台づくり・言い換えはOK。顧客情報を扱う作業はNG。
  2. 入力してはいけない情報
    • 例:顧客名、見積・契約の中身、人事情報、社内限定資料。前の章の表をそのまま貼ってもかまいません。
  3. 使うアカウント
    • 例:業務では会社が指定したアカウントを使う。個人アカウントでの業務利用は避ける。
  4. 設定の統一
    • 例:学習オフの設定を全員が確認する。パスワードは使い回さない。
  5. 困ったときの相談先
    • 例:「入れていいか迷ったら、まず○○さんに聞く」。誰に聞けばいいかを1人決めておく。
  6. 見直しの時期
    • 例:半年に一度、内容を見直す。

ポイントは、完璧を目指さないことです。細かすぎる規程は誰も読まないので、まず「守れる1枚」から始めるほうが実際に機能します。

生成AIのルールをもっと小さく始めたい場合は、非エンジニアでも作れる生成AI社内ルールの最小セットも参考になります。

沖縄の中小企業の休憩スペースで、数人の社員が一枚の紙を囲みながら、うなずき合って和やかに話し合っている場面

「禁止したほうが安全では?」への答え

「そこまでするなら、いっそ全面禁止のほうが安全では」と考える方もいるかもしれません。気持ちはよくわかります。

ただ、全面禁止には落とし穴があります。使いたい社員が、会社に内緒で自分のスマホから使い始めることです。これを「隠れ利用(シャドー利用)」と呼びます。

隠れ利用が起きると、会社は誰が何を入力したか把握できません。禁止したはずなのに、いちばん危ない状態になってしまうのです。

だからこそ、「守れる範囲で解禁する」という考え方が現実的です。ルールを決めて、堂々と安全に使えるようにするほうが、結果として情報を守れます。

人数が増えたら考えること

まずは、無料の設定変更と入力禁止ルールだけで十分に始められます。お金をかける必要はありません。

会社の規模が大きくなり、次のような状態になったら、有料プランを検討します。

  • 利用する社員が増えて、全員の設定を確認するのが大変になってきた
  • 誰がどう使っているか、会社としてまとめて管理したくなった

こうした段階になると、法人向けのプランで、履歴の管理やアカウントの一元管理ができるようになります。ただし、最初から契約する必要はありません。「設定とルール」で始めて、必要になったら有料を考えるという順番で十分です。

社内のIT全般の守りを見直すときは、中小企業のセキュリティ最低限チェックリストもあわせて確認しておくと安心です。

まとめ:今日からできる第一歩

ChatGPTを安全に使うための流れを、もう一度整理します。

  • 漏れる経路は「入力・アカウント・不具合」の3つ
  • 迷ったら「入れない」を原則に、入力してよい情報とダメな情報を分ける
  • 無料で学習オフの設定を確認する
  • 6項目を1枚にまとめたルールを作る
  • 半年に一度見直し、禁止一辺倒にしない

まずは、今日できることを1つだけやってみてください。学習オフの設定を変える、または入力禁止リストを1枚書く。そのどちらかから始めれば、十分な一歩になります。

生成AIそのものをこれから始める方は、生成AIは何から始める?中小企業の第一歩も入り口としておすすめです。