「ChatGPTを仕事で使ってみたい。でも顧客の名前や見積を入れて大丈夫なのか」。そう迷って手が止まっている方は多いです。

結論から言うと、入れてよい情報を選び、学習させない設定をすれば、会社でも使えます。この記事は「禁止しましょう」ではなく「安全に使うための線引き」の話です。読み終えたら、今日から2つのこと(設定と線引き)を実行できます。

まず結論:使ってよい。ただし「入れてよい情報」を選ぶことが前提

ChatGPTを会社で使うこと自体は問題ありません。メールの下書き、文章の要約、アイデア出しなど、日々の作業をかなり助けてくれます。

ただし「なんでも入れてよい」わけではありません。入力する内容を選ぶ、という一手間が必要です。ここさえ押さえれば、過度に怖がる必要はありません。

この記事のゴールは次の2つです。

  • 入れてよい情報・ダメな情報の線引きを、あなたの会社の書類に当てはめて決める
  • 入力内容を学習に使わせない**設定(オプトアウト)**を、全員の端末でやっておく

この2つができれば、いちばん心配な「うっかり漏れ」の大部分は防げます。順番に見ていきましょう。

すでにメール作成などで使い始めている方は、ChatGPTでメール・提案書を速く書くもあわせて読むと便利です。

なぜ情報漏洩が心配されるのか(仕組みをやさしく)

まず、何が問題なのかを知っておくと線引きがしやすくなります。難しい話は省いて、要点だけ説明します。

ChatGPTは、利用者が入力した文章を、サービスをよくするための学習に使うことがあります。設定によっては、あなたが打ち込んだ社外秘の内容が、会社の外のサーバーに送られて残る可能性がある、ということです。

過去には、従業員が社内の機密情報を入力してしまい問題になったと報じられた例があります。また、システムの不具合で、他の人の会話の一部が見えてしまった事例も報じられています。頻繁に起きるわけではありませんが、ゼロではないと考えておくのが安全です。

漏れる入口は、大きく分けて3つだけです。

  • 入力内容:社外秘や個人情報をそのまま打ち込む
  • アカウント乗っ取り:パスワードが弱く、履歴を他人に見られる
  • 履歴の残存:過去の会話がずっと保存されたままになる

この3つを塞げばよい、と考えると対策はシンプルになります。

入れてよい情報・ダメな情報の線引き(信号表)

ここがこの記事のいちばん大事な部分です。「機密情報は入れない」とだけ言われても、何が機密か迷いますよね。そこで、信号の色でイメージできる3段階に分けます。

信号 扱い 具体例(中小企業でありがちなもの)
青(そのまま入れてOK) 個人や取引先が特定されない情報 公開済みの商品説明、一般的な挨拶文、社外に出しても困らない文章、法律や制度の一般知識
黄(要加工=伏せれば可) 加工すれば使える情報 顧客宛メールの文面、取引先名・金額入りの見積、求人票のたたき台、社内マニュアルの一部
赤(入れないで) 特定の個人・会社が漏れると困る情報 顧客名簿そのもの、応募者の履歴書・連絡先、口座やクレジット情報、パスワード、契約書の原本

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沖縄の小さな会社の事務所で、担当者が紙の見積書に付箋を貼り、取引先名の欄を手で隠しながらパソコンに向かっている場面。窓の外に青い空とゆるやかな日差し

「要加工(黄)」の具体テクニック

黄色は「そのままはダメ、でも伏せれば使える」ゾーンです。ここを使いこなせると便利さが一気に増します。加工のコツは次のとおりです。

  • 会社名や人名を**「A社」「Bさん」**などの記号に置きかえる
  • 金額や数量はダミーの数値に差しかえる(要約や文面作りには本物でなくてよい)
  • 住所・電話番号・メールアドレスは削るか「〇〇」に置きかえる

たとえば観光・宿泊業で、予約者の氏名や連絡先が入ったメールをそのまま貼って返信文を作らせるのは黄〜赤です。氏名を「お客さま」に、日付や人数だけ残して伏せれば、返信文はきちんと作れます。建設や小売で、取引先名と金額入りの見積を要約させたいときも、会社名を「A社」、金額をダミーにすれば安全に使えます。

「加工が面倒」と感じるかもしれませんが、慣れれば数十秒です。線引きの詳しい作り方は社内でChatGPTを安全に使うルールの作り方もあわせてご覧ください。

学習させない設定(オプトアウト)の手順

次に、入力内容を学習に使わせない設定です。これは無料でできて、数分で終わります。

ブラウザ版・アプリ版の基本の流れ

  1. 画面の隅にあるアカウント名やアイコンをクリック(スマホは右上や左上のメニュー)
  2. **「設定(Settings)」**を開く
  3. **「データコントロール」**にあたる項目を開く
  4. 「すべての人のためにモデルを改善する」のような項目をオフにする

これで、以後の入力が学習に使われないようになります。

メニュー名は時々変わります。もし記事と表示が違っても、あわてないでください。探し方は共通です。「設定」→データやプライバシーに関する項目→学習・改善に関するスイッチ、という順で見ていけば見つかります。「Improve the model」「データコントロール」といった言葉が目印です。

一時チャット(履歴を残さない使い方)

もう1つ、履歴自体を残さない「一時チャット」という使い方があります。

  • 新しい会話を始めるときに**「一時チャット」**を選ぶと、その会話は履歴に保存されません
  • 学習にも使われず、一定期間後に消えます
  • ただし過去のやり取りを覚えていないので、続きものの作業には向きません

通常のオプトアウトは「履歴は残るが学習には使わない」、一時チャットは「履歴も残さない」。用途で使い分けると安心です。

設定をしても“これだけは残る”リスク

正直にお伝えします。学習オフにしても、リスクがゼロになるわけではありません。ここを誤解しないことが大切です。

  • 入力した文章は、いったん会社の外のサーバーに送られます
  • 不正利用がないか調べるため、一定期間は保管され、必要に応じて人が確認する場合があります
  • 設定は「学習に使わない」であって「一切外に出ない」ではありません

つまり、赤(入れないで)の情報は、設定をしていても入れないのが基本です。設定は黄・青を安心して使うためのもの、と考えてください。

そして最大のリスクは、実は設定より人です。従業員が急いでいて、顧客名簿をそのままコピペしてしまう——これがいちばん起きやすい漏れです。設定では防げません。次に紹介する「かんたんな社内ルール」で守るしかありません。

会社の規模別・現実的な選択肢

「うちの規模なら何を使えばいい?」という疑問にお答えします。大がかりな仕組みは、数人〜数十人の会社には過剰なことが多いです。

  • 数人〜十数人:無料版またはPlus(有料の個人向け)+学習オフ設定+かんたんな社内ルール。これで十分現実的です
  • チームでまとめて使う:Business(旧Team)/Enterprise(法人向けプラン)は、既定で入力が学習に使われない方針です。人数が増えて管理したくなったら検討する価値があります
  • API・専用の情報漏洩対策ツール・Azure経由など:名前は聞くかもしれませんが、小規模なら無理に導入する必要はありません。まずは設定とルールで十分です

なお、法人向けの「Team」プランは2025年8月にTeamからBusinessへ名称変更されました。中身(既定で入力を学習に使わない方針)は変わっていません。古い記事で「Team」と書かれていても、いまの選択画面では「Business」と表示されるので、あわてないでください。

「無料だと危ないのでは」と思うかもしれませんが、無料版でも学習オフ設定はできます。大事なのはプランより、入れる情報を選ぶことと設定をすることです。プラン選びで迷ったら失敗しないITツールの選び方(コスト重視)も参考になります。

今日からできる社内ルールの最小セット

最後に、貼り紙1枚で始められる最小ルールを紹介します。立派な規程は要りません。まずはこれだけで十分です。

  1. 入れてよい情報の線引きを掲示する(青・黄・赤の表を印刷して貼る)
  2. 学習オフ設定を全端末で行う(新しい人が入ったら必ず設定)
  3. 迷ったら「要加工」(伏せてから貼る、が合言葉)
  4. 共有リンクの扱いを決める(会話の共有リンクは社外に出さない)
  5. 困ったら相談先を1人決めておく(判断に迷ったらその人に聞く)

パスワードの使い回しを防ぐなど、土台のセキュリティも一緒に整えると安心です。あわせて中小企業のセキュリティ最低限チェックリストや、ルールの作り方をまとめた非エンジニアでも作れる生成AI社内ルールの最小セットもご覧ください。

まとめ

ChatGPTは会社で使ってよいです。ただし条件が2つあります。入れる情報を選ぶことと、学習させない設定をすること。この2つで、いちばん怖い「うっかり漏れ」の多くは防げます。

今日やることは次の2つだけです。

  • ① 全端末で学習オフ設定(数分で終わります)
  • ② 青・黄・赤の線引きを1枚の紙にして貼る

完璧を目指さず、この一歩から始めれば大丈夫です。安全に、便利にChatGPTを使っていきましょう。